こんにちは、ヨーコです。
脳卒中の後遺症の一つに「半側空間無視」があります。
半側空間無視とは
半側空間無視は、脳卒中や事故などで右脳に損傷が出たときに起こりやすく
左側の空間に注意を払えなくなり、結果として左側の空間を認識できなくなります。
なので、半空間無視は、注意という認知機能の障害と考えられています。
つまり、注意のバイアスが右に偏っている、という障害です。
BIT行動性無視検査の具体的な半側空間無視の例に関してはこちらの記事をどうぞ!
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右に偏っている注意のバランスを治すことができれば、
左側にも注意を払うことができて、
その結果として左のものを「認識」できるようになるんですね。
期待のリハビリ、プリズム順応
注意のバランスを治す目的のリハビリの中に、「プリズム順応」があります。
この方法は、時間も取らず簡単で、しかも患者さんに負担もかからないので注目されています。
プリズム順応を紹介した詳しい記事はこちらを!
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注意、運動はオッケーだけど、知覚はダメ?
ただプリズム順応も、万能ではないことはわかっています。
プリズム順応は「注意」や「運動」のバランスには効果がありますが
「知覚」のバランスには効果がなかった、という報告があります。
参考文献:Ferber S, Danckert J, Joanisse M, Goltz HC, Goodale MA. Eye movements tell only half the story. Neurology. 2003 Jun 10;60(11):1826-9.; Danckert J, Ferber S. Revisiting unilateral neglect. Neuropsychologia. 2006 Dec 31;44(6):987-1006.
カナダのFerber博士らの研究では
右脳の損傷による左側の半側空間無視の患者に
視界を10度ずらすプリズム入りのゴーグルをつけてもらって、
目の前のターゲット指差してもらいました。(50回)
これがプリズム順応な訳ですが、
その前後にテストをしてもらいます。
Chimeric Face テスト(すみません、適当な日本語訳が見つかりませんでした!)と言って、
右と左と表情が違う同一人物の写真2枚をを見て、
どちらの写真がより「ハッピー」に見えるか、
を答えるテストです。
これがChimeric Faceで使われる写真の例です。
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出典:Danckert & Ferber (2006)
健常者をテストすると、上の写真(左半分が笑っている)と
下の写真(右半分が笑っている)を選ぶ確率は、それぞれ約50%。
どちらかというと、左半分の顔が笑っている写真をより「ハッピー」に見えると
感情に関するバイアスは左にあるというレポートもあります。
あと、テストの際に眼の動きも記録しています。
で、これが結果です。
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出典:Danckert & Ferber (2006)
点で表されているのは固視、
つまり、見ようとしている物体を的確に捉えているということです。
左側の写真はプリズム順応の前です。固視されているのは、全部顔の右側ですね。
つまり、右のバイアスがあるということです。
実際、92%の割合で、右半分の顔が笑っているChimeric Faceの写真を
より「ハッピー」に見えると答えています。
つまり、知覚でも右のバイアスがあるということです。
右側の写真はプリズム順応後です。前に比べて顔全体に満遍なく固視していますね。
つまり、眼の動きに関しては、プリズム順応の効果があったわけです。
ところが、眼の動きのバイアスは無くなったというのに
まだ同じ割合で(92%)、右半分の顔が笑っているChimeric Faceの写真を
より「ハッピー」に見えると答えています。
つまり、「知覚」のバランスは右寄りのバイアスがかかったままだった、ということです。
固視しているからといって、そこから情報を得ているとは限らないんですね。
プリズム順応は効果があると言っても、まだまだ研究が必要で、
こういったナゾを解明する必要があるようですね。