こんにちは、ヨーコです。

SDMTは、WAIS Digit Symbol サブテストの改良版に当たります。

SDMTは注意能力とワーキングメモリーによって左右される

情報処理能力を評価する際に使われます。

以前筆記版のSDMTに関して記事を書きました。↓↓↓↓

Symbol Digit Modalities Test (SDMT):認知機能検査

認知機能の検査、Symbol Digit Modalities Test (SDMT) の点数、基準値

筆記版のSDMTですが、先ほどの情報処理能力のほかに

視覚運動調整 (visuo-motor coordination) も関わってきてしまいます。

例えば、情報処理能力はあるのに、手を動かすことを困難としている人は、

点数が低くなってしまいます。

しかし、この点数は本当の情報処理能力を反映しているわけではありません。

身体的に困難がある人、ある程度純粋な情報処理能力を求めるときなど、

口頭版が適している時があります。

オリジナルのSDMTと注意点

もともとは、Dr. Aaron Smith が開発した、スクリーニングのテストです。

彼がどういう人なのか、掘り下げて書きたかったのですが、

あまり情報がありませんでした。


Fellows et al. (2020) によると、Smith のマニュアル(改訂版)では、

まず、筆記版を施行し、続けて口頭版を施行し、

それぞれの標準値を報告しているようです。


筆記版ですが、10個の図形の練習の後(時間制限なし)、

110個の図形の本番に入ります。本番は90秒です。


筆記が終わるとすぐに口頭版に移ります。

筆記で練習があったので、口頭版には練習はありません。

口頭版でも、全部で110個の記号があります。


Fellows et al. (2020) によると、Smithの報告したデータは、

18歳から78歳までを対象にしたものでした。

その平均値は、筆記版が53.74(SD=9.04)、口頭版が54.54(SD=10.07)。


お気づきのように、口頭版のほうがやや、点数が高いですね。

おそらくこれは、口頭版では視覚運動調整をする必要がないということと、

既に筆記で練習してあるので、単に練習効果があった、と考えられるでしょう。


そのため、Smithの提示した筆記版の基準値はOKとしても(ちょっと古いデータですが)、

筆記版の基準値は、筆記版のみを使用する際には適していないという声があったようです。


そして今回の記事では、そういった理由から、基準値をアップデートした論文を

紹介していきたいと思います。

口頭版のSDMTの基準値

おそらくStrober et al. (2020) の論文が

最も最近の口頭版の基準値を報告していると思います。



アメリカですね。

研究対象人数:663人 (筆記版に比べると少ない人数です)

年齢: 18-74歳

参加者: 健康であること

目的:今ある基準値は古いので、アップデートすること


年齢、性別、学歴ごとまとめたSDMT平均値(標準偏差値)(Strober et al. (2020) 図5より)

ポイント

  • 点数は、高齢になるほど低い
  • 点数は、学歴が低いほど低い
  • 点数は、男性のほうが低い


上の表を見てください。

平均値や範囲はわかりやすいと思いますが、標準偏差値(SD)って、なに?

と思われる方も多いのではないでしょうか。



1番若い人のグループ平均値は65.32、標準偏差値は10.17です。

標準偏差値ですが、点数の散らばり具合を表しています。

数値が小さいほど、みんな似たり寄ったりの点数、

数値が大きいほど、点数のばらつきが大きいということです。

1番若いグループの標準偏差値は一番高いですね。

得点にばらつきがあるということです。

得点の範囲がレポートされていませんが、

おそらく最低得点と最高得点の差が大きいのでしょう。

年齢、性別、学歴ごとのカットオフ (Strober et al. (2020) 図6より)


カットオフもレポートしていますね。

左端にある、SDは、標準偏差値のことです。

個人的には標準偏差値ではピンとこなくて、パーセンタイルのほうが好きなので、

パーセンタイルに変換したい方のためにこの表を付け加えておきます。


正規分布とそれぞれの標準偏差値のパーセント
(Normal Distribution Percential, n.d., 図1より)

女性の最年少グループで学歴が16年未満の人を見てみましょう。

65点をとると、SDが0です。つまり、上にも下にも半分の人がいて、

平均点を取ったということになります。


ちなみにSDがー3と+3が、図にありませんが、

それぞれ0.3%の人が上と下にいるということになります。


まとめ

筆記版の標準値に比べて、対象者がかなり少ないです。

年齢人数
18-24122
25-34118
35-4487
45-54115
55-64114
65-74107
全体663
(Strober et al. (2020) 図3より)

それでも、口頭版だけを施行した時の標準値を

アップデートしたことは評価に値すると思います。

また、点数のパターン(女性>男性等)は、筆記版と同じです。

これも、重要なポイントですね。



ただ、筆記版であは、人種によって基準値も変割ることがわかってきます。

日本の研究者の方にも是非、口頭版の標準値の研究をしていただきたいと思います!



参考文献

Nocentini, U., Giordano, A., Vincenzo, S. D., Panella, M., & Pasqualetti, P. (2006). The Symbol Digit Modalities Test–Oral version: Italian normative data. Functional neurology, 21(2), 93-96.

Normal Distribution Percentile. (n.d.). StudySmarter. Retrieved April 14, 2024, from https://www.studysmarter.co.uk/explanations/math/statistics/normal-distribution-percentile/#:~:text=For%20a%20normal%20distribution%2C%20the%20z%2Dscore%20is%20the%20number,lies%20below%20that%20z%2Dscore.

Strober, L. B., Bruce, J. M., Arnett, P. A., Alschuler, K. N., Lebkuecher, A., Di Benedetto, M., … & Roman, C. (2020). A new look at an old test: Normative data of the symbol digit modalities test–Oral version. Multiple Sclerosis and Related Disorders, 43, 102154.

Smith, A. (1982). Symbol Digit Modalities Test (SDMT). Manual (Revised). Los Angeles: Western Psychological Services.


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