こんちは、ヨーコです。


ADCS-ADLというテストをご存じでしょうか?

このテストは、アルツハイマー病患者の日常生活動作の能力を評価するスケールです。

アルツハイマー病というと、記憶障害を思い浮かべる方も多いでしょう。

でも実際は、判断力の低下、見当識障害(日付や時間、場所の感覚が薄れる)等の

生活障害も現れてきます。


このスケールなのですが、よく見ると、

記憶以外にどんなことが難しくなってくるのかがわかります。

それぞれの項目に目を通していくと、

アルツハイマー病が進行していくと

日々の生活能力にどのような影響が出てくるのかを予測することができます。

また、生活能力の衰えから、「もしや?」と早期の診断を受けることもできるのでは、

と思えるところがあります。


軽度認知症の父のことを思い浮かべると、「あるある」とうなづけること多々。

例えば、私の父は自分で爪を切りません。母が切っています。

これは、できないのか、ただの甘えなのか?

後ほどご紹介しますが、爪を切ることに関する質問もあります(質問5)。

自分で爪を切らないと、ADCS-ADL的には、減点です。

自分で身だしなみを整えるということも、大切な日常生活動作の一つです。

これができないと、元気で健康な老人から遠ざかっていきます。


別の角度からこのスケールを考えることがあります。

これがこの記事を書こうと思った理由でもあります。

昔大学の生物心理学で「If you do not use it, you’ll lose it.」と教授が言っていました。

「使わなければ忘れる」ですね。

その時の授業は脳に関することでした。

脳科学的に言うと、頭を使うとシナプスが変化して強化されていきます。これが学習です。

ところが、使わないとシナプスが弱くなってしまうということです。忘れるってことです。


つまり、忘れたくなければ、使い続ける!

ADCS-ADLの質問項目は、どれもが普段の生活の中でのことに関してです。

若い人にとっては、すべてが当たり前すぎる事柄が多いです。

しかし、年を取るにしたがって、じわりじわりと

「しなくなる」になり、さらには「できなくなる」になります。


認知症予防のためにも、それぞれの項目に目を通し、

トップレベルのパフォーマンスを(そんなに大げさなものではありませんが)、

維持していきたいものです。


それでは、ADCS-ADLの項目を一つ一つ検証していきましょう。

目次

ADCS-ADLとは?

ADCS-ADLは、

Alzheimer’s Disease Cooperative Study Activities of Daily Living Inventory、

日本語では、「日常生活活動」(ADLのこと)を評価するツールといったところでしょうか。

英語版のフォームはここで見れると思います。


ADCS-ADLは、インタビュー形式なのですが、本人にではなく

本人をよく知っている親しい間柄の人(配偶者、子供、兄弟、友人等)に質問をし、

選択肢の中から、一番本人のことを表している記述を選択してもらいます。

質問によって、通常のパターンを選んでもらう場合と、

ベストパフォーマンスを選んでもらう場合、または単に

「はい」か「いいえ」で答えてもう場合があります。


質問の内容は、過去4週間における「日常生活活動」、

例えば食事や、排せつ、着替えなどについて質問します。

それでは見てみましょうか。

点数はカッコ内に書いておきました。

食事について:以下の選択肢の中で過去4週間の通常のパターンを一番よく表しているのはどれですか?

  • 身体介助なしで、ナイフを使って食べた (3)
  • フォークやスプーンを使って食べたが、ナイフは使わなかった (2)
  • 指を使って食べた (1)
  • ほとんど誰かに食べさせてもらった (0)


英語版から直訳したのですが、

日本人には「ナイフ」は「はし」と訳したほうがいいかもしれません。

はしを使っての食事が、一番レベルが高いです。


今まではしを使って食べていた人がフォークやスプーンのみを使うようになったら、

「おや?」っと感じますよね。


指先を使うのは脳トレにもなります。

実際に手先の動作をテストする神経心理学テストもあるくらいです。

興味がある方はこちらを!↓↓↓↓

ペグボードテスト:手の動作で診断する神経心理学的検査

歩くこについて(車いすでの外出も):以下の選択肢の中で過去4週間の最も高いレベルを表しているのはどれですか?

  • 身体介助なしで、外を移動した (3)
  • 身体介助なしで、家の中を移動した (2)
  • 介助なしで、ベッドから椅子まで移動した (1)
  • 移動するには身体介助が必要だった (0)


英語版から直訳したので、「ベッド」は「ふとん」でもいいかもしれません。

今まで家の外を歩いていた人が、家の中だけになったりしたら、これも「おや?」ですね。

歩くことが健康にいいということはすでに常識になっています。

歩くことはシンプルな運動。しない手はありませんよね。


何かものを頼まれたら、さっと立って動く。これ、家族にも喜ばれるし

なによりも、健康にいいです。


運動が脳にいいという記事も書きました。詳しくは、こちらもどうぞ!↓↓↓

高齢者の脳トレ、運動も!:認知症防止、押さえておきたいポイント

トイレについて:以下の選択肢の中で過去4週間の通常のパターンを一番よく表しているのはどれですか?

  • 口頭でのヘルプや介助なしで、必要なことはすべでできた (3)
  • 口頭でのヘルプは必要だったが、身体介助は必要なかった (2)
  • 身体介助が必要だったが、たいていトイレは失敗しなかった (1)
  • 身体介助が必要で、たいていトイレを失敗した (0)


口頭でのヘルプですが、ちょっと声をかけるだけでOKでしたら、

「口頭でのヘルプなし」でいいと思います。

「お父さん、トイレは?」で、「おお」と言ってトイレに立つ。

こんな感じなら一番上のレベルです。


おむつがあるから、いいか?ではなく

声掛けで対応できたらそのほうがいいですよね。

風呂に入ることについて:以下の選択肢の中で過去4週間の通常のパターンを一番よく表しているのはどれですか?

  • 言われることや身体介助なしで風呂に入った (3)
  • 身体介助は必要なかったが、しっかりと風呂に入るには口頭でのヘルプが必要だった (2)
  • 簡単な身体介助(髪を洗う等)がしっかりと風呂に入るには必要だった (1)
  • しっかりと風呂に入るには、身体介助が必要だった (0)


「口頭でのヘルプ」ですが、その場にいて、指示し続ける必要があって

時間をとられたっていうことです。

そういう場合は、「口頭でのヘルプ」があった、となると思います。


私の父は、「風呂に入る」こと自体は大丈夫ですが

体を洗いません。

母が浴室まで行き父の体を洗っています。


次の質問も類似していますが、体をきれいに保つことは

現代人にとっては、社会生活をするにおいて大切なことです。

身だしなみ:以下の選択肢の中で過去4週間の最も高いレベルを表しているのはどれですか?

  • 身体介助なしに、爪をきれいにし、切った (3)
  • 身体介助なしに、髪をとかした (2)
  • 身体介助なしに、顔と手をきれいに保った (1)
  • 髪、顔、手、爪をきれいにしておくには、介助が必要だった (0)


ここでは、爪を切ることが、一番レベルの高いパフォーマンスです。


また、父のことを考えました。4番目の一番下のレベルです。

自分でするように言ったらどうなるんだろう?

きっと「いいじゃん、やってよ」になるんでしょうね。

しまいには、怒り出すんだと思います。


早い時期から、母が口頭で促していたらどうなっていたんだろう?

いろいろ考えてしまいます。

服を着ることについて:過去4週間で、その日に着る服を自分で選びましたか?

はい・いいえ・わからない

回答が「はい」の場合、

以下の選択肢の中で通常のパターンを一番よく表しているのはどれですか?
  • 口頭での指示や身体介助なし (3)
  • 口頭の指示あり(2)
  • 身体介助あり(1)


着る服を選ぶということは、かなり頭を使いますよね。

その日の予定と手持ちの服を同時に思い浮かべ、適切な服を選択する。

かなりハイレベルな作業です。

毎日服を自分でいる皆さん、知らないうちに脳トレをしているんですよ!

ここでは、「選べるか」がポイントなので、センスがいい悪いは、置いておきます。

服を着ることについて

以下の選択肢の中で過去4週間の通常のパターンを一番よく表しているのはどれですか?

  • 口頭の指示や身体介助なしでしっかり服を着た (4)
  • 口頭の指示はあったが、身体介助なしでしっかり服を着た (3)
  • ボタン、ファスナー、靴紐のみ、身体介助が必要だった (2)
  • ファスナーやボタンがなければ介助なしで服を着た (1)
  • 服の種類に関係なく、常に介助が必要だった(0)


服を着るということは、非常に複雑な動作です。

毎日のことなので、考えることなくこなす作業です。

自転車をのることと似ているな、と思いました。

慣れてしまえば、当たり前のように乗れます。


服を着ることですが、もし体が硬くて身体介助が必要だった場合はどうなるのか?

細かい作業ができないと、点数が低いんですが、これはどうなんでしょうね。

例えば、女性のワンピースなどの場合、後ろのファスナーに手が回らなくて、

誰かに援助してもらうのは、

日常生活動作の能力がやや低いとなってしまうのか?ならないですよねー。

すみません、はっきりしたことは言えません。

電話について:過去4週間で、電話を使用しましたか?

はい・いいえ・わからない

「はい」の場合、以下の選択肢の中で最も高いレベルを表しているのはどれですか?

  • 電話帳を使ったり、番号案内サービスを利用して電話をした (5)
  • 電話帳やリストを見ずに、よく知っている番号にのみ電話をかけた (4)
  • 電話帳やリストをみて、よく知っている番号のみ電話をかけた (3)
  • 電話にでたが、電話はかけなかった (2)
  • 電話に出なかったが、かかってきた電話では話をした (1)


最近では、設定されている番号で、簡単に電話をかけることができます。

これは3番目の選択肢ですね。

電話をかけるという作業も、かなりハイレベルです。


認知症になると、電話に出ないという話を聞きます。

以前は友人と電話で話をしていた軽度認知症の父ですが、

今は自分から電話をするということはないようです。


電話番号を調べるという、リサーチ作業、指先を使って電話をかけるという作業、

そして、会話をするというとてつもなくハイレベルな作業がすべて関わってきます。


実は私も電話での会話は苦手です。顔が見えない相手と会話をし、

相手を理解するだけでなく、自分の言っていることも相手に理解させる必要があるからです。

でも、脳トレのためにも、面倒くさがっていてはいけない!と思って記事を書いています。

テレビを見ることについて:過去4週間で、テレビを見ましたか?

はい・いいえ・わからない

「はい」の場合、

  • たいていの場合、自分で好きな番組を選んだり、
    人に頼んで好きな番組を選んでもらったりした (1)
  • テレビを見ているときに、たいていの場合、内容についてコメントした (1)
  • 見終わった後24時間以内に、たいていの場合、内容についてコメントした (1)


テレビを見ることですが、これはたぶん、「ものごとへの興味」に対する評価だと思います。

これは、ボーっとと見ているだけではないかどうか、を質問しています。

例えば、「番組を選ぶ」ことについてですが、興味があって、

何かを見たいという意思があるかどうか、ですよね。


見ているときにコメントをするかどうかですが、

番組の最中のコメントはよいこととみなされています。

「お父さん、黙っていて!」というのは、ちょっと控えたほうがいいかもしれません。

また、邪魔にならない程度に、こちらから会話を振ってもいいかもしれません。

何かを見て、何かを思い、そのことについて話すことは、非常に良いことです。

会話について:過去4週間で、少なくとも5分間は会話に注意を払っていましたか?

はい・いいえ・わからない (自分から会話を始めなくてもいいです。)

「はい」の場合、以下の選択肢の中で通常のパターンを一番よく表しているのはどれですか?

  • たいてい会話のトピックに関係することを話した (3)
  • たいてい会話のトピックに関係ないことを話した (2)
  • 話すことはほぼまたは、全くなかった (1)


会話、やはりハイレベルな作業です。

先ほども電話のときに書いたように、まず相手を理解することが必要です。

そして相手を理解させることも。

このために、脳はベストなロジックを一生懸命考えるわけです。


ただ、当たり障りなく相槌を打つだけだと、あたかも話を理解しているようにも見えますよね。

私も時々やってしまいます。

英語の会話で、適当に「I see(そうですね)」などと、

分かっているフリをしてしまうときがあります。

いけませんね。


会話は、相手があってできることなので、積極的にそういった環境を作りましょう。

とりあえず、家の外に出ることですね!

食器の片づけについて:食事や軽食の後に、テーブルから食器を片付けましたか?

はい・いいえ・わからない

「はい」の場合、以下の選択肢の中で通常のパターンを一番よく表しているのはどれですか?

  • 口頭でのヘルプや補助なしで (3)
  • 口頭のヘルプで (2)
  • 身体介助で (1)


英語版には、「過去4週間で」が抜けていましたが、これも多分過去4週間の話だと思います。

「口頭でのヘルプ」は、おそらく、

「お父さん、ほらお皿片付けて!」とこんな感じだと思います。

一回言っただけで、片付けられるのなら最高のレベル、

色々指示が必要で指示している人の時間がとられる場合は2番目の選択肢ですかね。


特に男性の中には、もともとしないというパターンもあるのですが、

この質問の場合、「しない」と「できない」は同じとみなされます。

食器の片付けも、大切ですね!

とりあえず、からかを動かすことは、積極的にしましょう!

探し物について:過去4週間で、たいていの場合、自分でものを探すことできましたか?

はい・いいえ・わからない

「はい」の場合、以下の選択肢の中で通常のパターンを表しているのはどれですか?

  • 口頭でのヘルプや補助なしで (3)
  • 口頭のヘルプで (2)
  • 身体介助で (1)


食器の片付けと同様に、

「お父さん、メガネはパソコンのところよ」くらいで見つけられたら

一番目の選択肢だと思います。

飲み物をいれることについて:過去4週間で、たいていの場合、自分で温かいまたは冷たい飲み物を自分でいれましたか?

はい・いいえ・わからない

「はい」の場合、以下の選択肢の中で通常のパターンを表しているのはどれですか?

  • たいていの場合、身体介助なしで温かい飲み物を作った (3)
  • たいていの場合、誰かがお湯を沸かしてくれ場合、温かい飲み物を作った (2)
  • たいていの場合、身体介助なしで、冷たい飲み物をゲットした (1)


1番目と2番目の選択肢の違いは、誰がお湯を用意するのか、ということです。

ポットのお湯を使う場合、そのポットのお湯はだれが用意するのか?

飲み物を用意することも、複雑な作業です。

お茶を入れるにしても、色々用意するものがあります。

お湯、急須、お茶っ葉、湯飲み。これらがどこあるかを把握している必要があります。

お湯の熱さ、お茶っ葉の量、これらを判断するのも、ハイレベルなスキルです。

私は、お茶やコーヒーを入れるのが好きですが、

夫の脳トレのため、夫にも入れてもらったほうがいいのかな?

食事の用意をすることについて:過去4週間で、家で食事や軽食を作りましたか?

はい・いいえ・わからない

「はい」の場合、以下の選択肢の中で最も高いレベルを表しているのはどれですか?

  • ほとんど、または全く手助けなしで、料理をした、
    または食べ物を電子レンジにかけた(4)
  • いろいろ手助けしてもらって、料理をした、または食べ物を電子レンジにかけた(3)
  • 料理や電子レンジを使用することなく、食事や軽食のために食べ物を混ぜたり、
    合わせたりした(例:サンドイッチを作った)(2)
  • 混ぜたり料理することなく、食べ物を手に入れた (1)


別の認知症の検査でも、料理を作ることに対する変化を質問しますよね。

料理と認知症は切っても切れない中なのでしょう。

認知症やアルツハイマー病のアセスメントやトレーニングに

料理のコンピューターゲームを使用するといった動きもあるほどです(Manera et al., 2015)


私も、脳トレとしての料理に関して書きましたので、詳しくはこちらをどうぞ↓↓↓↓

頭を使う問題としての料理:高齢者の脳トレに最適!

意外に思われるかもしれませんが、電子レンジでチンして食事を料理するのは、

ハイレベルな作業だと考えられているようです。

「電子レンジを使用する」という、ちょっと難しい作業が入っているからでしょう。


3番目の選択肢ですが、日本風に言えばおにぎりなども当てはまるでしょう。

私は、食事を作ることは究極の脳トレと考えています。

よく母が言っていたのを思い出します。

「おばあちゃんは、全部お嫁さんにやってもらってたからボケちゃったんだよ。」

本当かどうかは亜別として、

これは、例の「物を使わなければ忘れる」の例ですね。

ごみを捨てること: 過去4週間で、家でごみを適切な場所やごみ箱に捨てましたか?

はい・いいえ・わからない

「はい」の場合、以下の選択肢の中で通常のパターンを表しているのはどれですか?

  • 口頭でのヘルプや補助なしで (3)
  • 口頭のヘルプで (2)
  • 身体介助で (1)


個人的には、この機能が衰えた人をあまり見たことがありませんが、

この作業も、ごみ箱がどこにあるかを把握し、家の中とはいえ、

そこまで移動するというちょっとした運動がかかわってきます。

自分でやったほうがいいですよね。

外出することについて:過去4週間で、家の外に出ましたか?

はい・いいえ・わからない

「はい」の場合、以下の選択肢の中で最も高いレベルを表しているのはどれですか?

  • 少なくとも、1マイル (1.6キロ) 離れた所へ一人で行った (4)
  • 1マイル以内であるが、一人で行った (3)
  • 距離に関係なく、誰かがついていて口頭でのヘルプがあった場合のみ外出した (2)
  • 距離に関係なく、身体介助があった時のみ外出した (1)


この項目では、とにかく外に出ることがポイントです。

交通手段は、自転車でも何でも構わないのです。

旅行に行ったとしたら、4点どころか、20点くらいあげたいくらいです。

一歩外へ出ると、世界は刺激であふれています。

刺激は脳の喜ぶビタミン剤のようなもの、だと思います。

買い物について:過去4週間で買い物に行きましたか?

はい・いいえ・わからない

16A. 16が「はい」の場合、以下の選択肢の中で通常のパターンを表しているのはどれですか?
  • 口頭でのヘルプや補助なしで (3)
  • 口頭のヘルプで (2)
  • 身体介助で (1)

16B. 16が「はい」の場合、口頭でのヘルプや指示なしに、品物の料金を払いますか?
  • はい (1)
  • いいえ (0)
  • わからない (0)


買い物は、運動にもなるし頭の体操にもなりますよね。

交通手段はどうあれ、少なくとも店内で歩く必要があります。

私もリモートワークですが、ちょっと買い物に行くと、

ターゲットの1万歩のカウントに限りなく近づいてきます。

そして品物を吟味するという作業。

値段を確認し、それが妥当かどうかを判断する。


支払いもハイレベルです。「金銭の管理ができるか」ということです。

別の認知症の検査でも、金銭の管理のことを質問します。


だんだん小銭の計算ができなくなって、お財布には小銭だらけ、

などということもあるでしょう。しかし、それでもまだ支払っていることに違いはありません。

また、カードで支払うより、現金で支払うほうが、脳トレという感じですが、

今の時代、カードでもよしとしましょう。

予定の管理:過去4週間で、親戚、医者と会う約束や、床屋に行く予約などを覚えていましたか?

はい・いいえ・わからない

「はい」の場合、以下の選択肢の中で、人との会う約束に対する事前の認識を一番よく表しているのはどれですか?

  • 書面(メモ、日記、カレンダー等)によるリマインダーが必要だったかもしれないが、
    たいていは覚えていた (3)
  • 当日に口頭でリマインダーがあった場合、覚えていた (2)
  • 当日に口頭ででリマインダーがあっても、たいてい覚えていなかった (1)



2番目の選択肢ですが、ですが、

「今日、床屋さんでしょ」「ああ、そうだったな」という感じです。

3番目の選択肢ですが、「今日、床屋さんでしょ」「え?覚えてない..」という感じです。

物忘れは普通の健康な老化現象です。

ここでは、

自分の物忘れを認識し、対処するという自立したパターンが一番上のレベルです。

言われても覚えていない、これが3番目です。


処方された薬は、若い人よりも老人のほうが覚えているという話を聞きました。

老人はメモやカレンダーを使って物忘れに対処しますが

若い人は自信過剰なのでそういうことをせず、忘れることが多いという話だったと思います。


物忘れがあっても、忘れるという自覚があるうちは、大丈夫。

どんどんメモをしましょう!

一人になることについて:過去4週間で一人になったことがありましたか?

はい・いいえ・わからない (施設に入っている人については、この質問はしません)

「はい」の場合、以下の質問をしてください

  • 一日のうちに、15分以上ひとりで外出しましたか? (1)
  • 一日のうちに、一時間以上家でひとりでいましたか? (1)
  • 一日のうちに、一時間未満家でひとりでいましたか? (1)


この質問では、一人でいることができるが、自立できている要素と考えるのでしょう。


軽度認知症の父ですが、自転車が好きで、1時間以上どこかへ行っています。

散歩はしぶしぶですが、母が半強制的に行かせています。

ボケが加速しないないためのトレーニングだそうです。

念のため、コレを持たせていますが。

最近の出来事を話すことについて、過去4週間で、最近の出来事を話しましたか?

はい・いいえ・わからない

「はい」の場合、以下の質問をしてください

  • 関わっていはいないけれど、聞いたり読んだりしたこと、
    またはテレビなので見たことなどを話しましたか?(1)
  • 家の外で、家族、友達、ご近所さんと関わった出来事について話しましたか?(1)
  • 家で起こったこと、見たことなどを話しましたか?(1)


3番目の質問ですが、「電話があったよ」や「雨が降ってきたね」等で大丈夫でしょう。

はやり、「会話」は大切です。

脳がフル回転するエクササイズ(運動)です。

外交的な人は認知症になりにくいという研究もされていますよ!

これも、究極の脳トレと言えるでしょう。

読み物をすることについて:過去4週間で、5分以上雑誌、新聞、または本を読みましたか?

はい・いいえ・わからない

「はい」の場合、以下の質問をしてください。

  • 読んでいる間、または読んだすぐあと(一時間未満)で、
    読んだ話の詳細を話しましたか?(1)
  • 読んだ後一時間以上後で、読んだ内容について話しましたか?(1)


読んだ理解した内容について話す。これもハイレベルですね。

「読む」という作業もそうですが、理解した内容を「まとめて話す」も難しいです。

読む内容としては、活字であればいいのでは、と思いますが(チラシやメール等)。


最近は、AIが、こういうことをやってのけますが(情報をまとめてアウトプットする)、

人はずっと昔からやってきました。


自分から話さなくてもいいと思います。

母は、元気なのですが、質問を振って、アウトプットをするように仕向けています。


父のほうですが、「ああ、まあ」という返事が予想できるのですが、

何かを読んだときにも、聞くようにしています。

物を書くことについて:過去4週間で、何か書きましたか?

はい・いいえ・わからない (言われて書いたり、補助付きで書いても「はい」です。)

「はい」の場合、以下の選択肢の中で書いた最も複雑なレベルを表しているのはどれですか?

  • 他の人が読んで理解できた手紙や長いメモ (3)
  • 他の人が読んで理解できた短いメモやメッセージ (2)
  • 自身の著名または名前(1)


書くことも、ハイレベルですね。

1番を2番のレベルでは、考えを整理し、一貫した分を作らなくてはいけません。

文法もそうです。

この質問ですが、質問の本質を考えると、スマホやコンピュータで文章を作成しても

「書いた」となると思うんですが。

趣味について:過去4週間で、趣味やゲームをしましたか?

はい・いいえ・わからない

「はい」の場合、次の項目のなかで、

当てはまりまる項目はすべてチェックマークを入れてください。

(注:散歩は趣味に入りません!)

  • カード、またはボードゲーム
  • ビンゴ
  • 楽器
  • 読書
  • テニス
  • クロスワードパズル
  • 編み物
  • 園芸
  • 工房での作業
  • アート
  • 縫物
  • ゴルフ
  • 釣り
  • その他_____


これらをデイサービスのみでするときは、チェックしてください。(  )

「はい」の場合、通常のどのよう余暇を過ごしますか?

  • 口頭でのヘルプや補助なしで (3)
  • 口頭のヘルプで (2)
  • 身体介助で (1)

趣味は大切ですね。

でも、認知症が進んでくると、今まで楽しんできたことに興味を失ってきます。

例えば、私の父もゴルフやスケッチが好きだたんですが、もうしなくなってしまいました。

コンピューターで知らない人と碁の対戦もしていましたが、もうしません。

お正月の箱根駅伝も毎年見ていたんですが、今年はもうあまり興味がないって感じでした。

趣味だったことをしなくなったら、少し心配してあげてくださいね。


また、まだ元気で趣味を楽しんでいる人、頑張れー!

家電製品を使うことにつて: 過去4週間で家事をするために家電製品を使用しましたか?

はい・いいえ・わからない


「はい」の場合、使用した家電製品を次の項目から選んでください。

  • 洗濯機
  • 皿洗い器
  • レンジ
  • 乾燥器
  • トースター
  • 電子レンジ
  • 掃除機
  • オーブン
  • フードプロセッサー
  • その他_________



「はい」の場合、一番よく使用する家電製品を通常の使用の仕方を

一番よく表しているのはどれですか?

  • ヘルプなしで、ボタンを一回押す以上の操作をした (4)
  • ヘルプなしで、オン・オフのみの操作をした (3)
  • 口頭でのヘルプあり、身体介助なし (2)
  • 身体介助あり (1)

ご覧のように、オン・オフの操作そするだけでも、上から2番目のレベルです。

まだ父が軽度認知症でなかったころ、母からもう少し手伝いをするように言われて

「ご飯をいつも炊いてるじゃん!」と怒っていたことを思い出しました。

スイッチ一つで炊けてしまう炊飯器なんですが。

もうちょっと感謝してもよかったのかな。


最近の家電製品をは、あまりにもハイテクでついていけないと、

気後れしてしまうかもしれませんが、老人にやさしい家電も、

探せばあると思いますよ。チャレンジは、脳も喜びます。頑張りましょう!

ADCS-ADLのカットオフ

ポルトガル語版を使って、カットオフをだしている論文を見つけました。

Cintra et al. (2017) によると、72 (または、71) 点がカットオフだそうです。


この点数が、MIC(軽度認知症)または、アルツハイマー病の人たちと、

そうでない人たちを区別する点数だったようです。

ちなみに、MIC のグループの平均値は65.1、アルツハイマー病のグループは 55.9

どちらでもない人たちのグループは 72.9でした。

まとめ

認知機能が衰えると、日常生活活動も次第におとろえてきます。

衰えのグラデーション、段階を追って変化していく日常生活活動を、

ADCS-ADLの回答選択肢がよく表していると思います。


日常生活活動は、日々の生活の中では、自立して生活するためには必要不可欠な活動。

おそらくこなしているだけで、頭を使い、体を使い、

常にウォーミングアップしている状態だと思います。

ADCS-ADLの中で質問している項目に関してはとくに、

簡単な自立に不可欠なトレーニングとしてみることができるのではないでしょうか。

参考文献

Cintra, F. C. M. D. C., Cintra, M. T. G., Nicolato, R., Bertola, L., Ávila, R. T., Malloy-Diniz, L. F., … & Bicalho, M. A. C. (2017). Functional decline in the elderly with MCI: Cultural adaptation of the ADCS-ADL scale. Revista da Associação Médica Brasileira, 63, 590-599.

Manera, V., Petit, P. D., Derreumaux, A., Orvieto, I., Romagnoli, M., Lyttle, G., … & Robert, P. H. (2015). ‘Kitchen and cooking,’a serious game for mild cognitive impairment and Alzheimer’s disease: a pilot study. Frontiers in aging neuroscience, 7, 24.

認知機能のテストのまとめ:加齢、脳卒中、認知症による機能の低下

認知機能テストのまとめ