こんにちは、ヨーコです。
神経心理学的検査のひとつとして、Symbol Digit Modalities Test(SDMT)があります。
と言っても、あまり日本では知られていないかもしれません。
しかし、北米ではトップ40に入るテストなんですよ(かろうじて40位ですが)!
Symbol Digit Modalities Test(SDMT)とは
SDMTは病院などの臨床現場や大学などの研究の場で
神経機能障害を調べるスクリーニングテストとして知られています。
かかる時間は5分程度で、簡単なテストです。
他の神経心理学的検査と同様、SDMTは注意、認知・知覚速度、モーター速度、
そして視覚的走査などの機能が反映されるテストです。
SDMTは脳障害を見つけるだけでなく、
認知機能の変化や治療に対する反応の変化を見ることもできます。
子供や大人もできる簡単な置き換え課題で、照合キーを使って
与えられた図形とそれに照合する番号を探します。回答には口頭と筆記とがあります。
残念ながら、SDMTは特定の障害をスクリーニングすることはできません。
しかし、脳機能障害があると、
平均知能があってもSDMTのスコアが低くなることがわかっています。
SDMTの応用として:
- 脳機能障害患者と精神病患者の違いを見分ける
- 器質性精神障害と抑鬱障害の違いを見分ける
- 老年性認知症とハンチントン病の早期発見
- 子供の学習障害や読解力障害を見分ける
- 外傷性脳損傷、脳血管疾患、腫瘍性疾、その他の脳損傷の患者の
認知機能の時間やセラピーによる変化を評価する - 閉鎖性頭部外傷からの回復を評価する
長所
被験者は、筆記または口頭の回答ができるので
SDMTは運動障害や発話障害のある人など、ほとんどどんな人にも対応できます。
また、SDMTは数字と幾何学的図形からなるテストなので
普遍的な要素を持ち、言語に左右されません。
筆記のテストに関しては、複数の人を一度にテストできるので、
コストがかからないという長所もあります。
SDMTは初期のスクリーニングとして特に効果的で
一連のテストの一つとして使われるとこが最も有効的とされます。
SDMTは以下の障害を評価するのにも使われます
- 頭部外傷
- 脳卒中
- 脳腫瘍
- 読字困難
- 学習障害
- アルツハイマー病
- 脳感染
- 老年性認知症
- 失語症
- 神経毒性
- アルコール依存症
- 脳無酸素症
- ハンチントン病
- 多発性硬化症(MS)
短所
有料です。
テストの仕方
筆記
試験者は被験者に、テスト用紙の一番上にある照合キーのことを説明します。
SDMTの一部 (Aaron Smith, PhD, © 1982 by Western Psychological Services)
つまり、一番上の列に幾何学的図形が並んでいて、
それぞれの図の下に番号がふってあります(上図参照)。
照合キーの下に、別の幾何学的図形の列があります。
それぞれの図の下には番号はふってありません(上図参照)。
被験者はこれから、照合キーを見ながら番号を書き込むことが課題となっています。
まだ説明は続きます。
試験者は一番最初の図に対しては、番号は「1」であることを説明します。
次に2番目の図を示し、被験者に番号を促します。
(そうですね、「5」ですね。)
次に3番目の図を示し、被験者に番号を促します。
(そうですね、「2」ですね。)
この後は、被験者にこの列の最後まで番号を記入していってもらいます。
これが、練習となります(全部で10個)。
テストの仕方が理解できない人には説明を繰り返します。
試験者は被験者に、合図とともにテストを初めて、次の合図があるまで
できるだけ多くの課題をこなすように言います。(制限時間破90秒)
間違った番号を書いたときは、消さずに上から正しい番号を書いてもらいます。
図形をとばしたりせず、一つ一つ番号を入れていきます。
図形は全部で110個あります。
口頭
口頭テストが筆記テストの後にされる場合:
説明は既にされているので、テスト用紙を渡した後は
合図とともに照合キーの下の列から始めてもらいます。
回答は試験者が記録します。
口頭テストのみをするとき:
被験者は、最初の図、10個を練習することができます。
他の指示は、回答が口頭になるだけで、筆記のときと同じです。
採点
90秒間に正確に回答できた数が(合計点)がスコアになります。
図形は全部で110個あるので、最高点は110点となります。基準値・カットオフ等については、調べていますのでまた後ほど!
基準値については、こちらをどうぞ!
↓↓↓↓
認知機能の検査、Symbol Digit Modalities Test (SDMT) の点数、基準値
注意のネットワーク(ANT)との関係
脳のネットワークに関係する注意のネットワークに関して先日お話ししました。
↓↓↓↓
認知機能、注意のネットワーク(ANT)と関係する脳のネットワーク
SDMTは、注意のネットワークの中でも「反応の競合を解消する(executive control)」
ネットワークと関わっているという報告があります。
照合キーと課題のシンボルに関する情報処理には確かに
複数の情報の競争を制して正しい情報を選ぶ、という複雑な作業が関わっていますね。
参考文献
Benedict, R. H., DeLuca, J., Phillips, G., LaRocca, N., Hudson, L. D., Rudick, R., & Multiple Sclerosis Outcome Assessments Consortium. (2017). Validity of the Symbol Digit Modalities Test as a cognition performance outcome measure for multiple sclerosis. Multiple Sclerosis Journal, 23(5), 721-733.
Ishigami, Y., Eskes, G. A., Tyndall, A. V., Longman, R. S., Drogos, L. L., & Poulin, M. J. (2016). The Attention Network Test-Interaction (ANT-I): reliability and validity in healthy older adults. Experimental brain research, 234(3), 815-827.
Rabin, L. A., Barr, W. B., & Burton, L. A. (2005). Assessment practices of clinical neuropsychologists in the United States and Canada: A survey of INS, NAN, and APA Division 40 members. Archives of Clinical Neuropsychology, 20(1), 33-65.
Smith A (2004) Symbol digit modalities test (SDMT). In: Lezak M (ed) Neuropsychological assessment. Oxford University Press, New York, pp 370–371
Symbol Digit Modalities Test (SDMT). Retrieved from http://www.hogrefe.co.uk/symbol-digit-modalities-test-sdmt.html
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