こんにちは、ヨーコです。


最近多いですね、高齢者の運転事故。

先日も高齢の女性の車が病院に突っ込んだというニュースを見ました。


認知機能は私たちが生活する上で非常に重要な機能。

運転するときにももちろん認知機能はフル回転して使われます。


悲しいかな、認知機能は高齢とともに低下します。

なので、今年(2017年・平成29年)3月12日から改正道路交通法が施行され

75歳以上の方の認知機能検査は、これまでは更新時にしか義務化されていませんでしたが

これからは信号無視等の特定の交通違反をした場合にも、

臨時認知機能検査を受けることになりました。



認知機能を検査するテストはいろいろありますが、

警視庁が使っている認知機能検査は、MoCAMMSEなどの、

すでに信頼性や妥当性が評価されている検査の一部を応用して使っていますね。


MoCAやMMSEに関する記事はこちらをどうぞ!

↓↓↓↓

認知機能を計るテスト、MoCA-Jの解釈(MoCAの日本語版)

認知機能を計るテスト、MMSEの解釈:ミニメンタルステート検査




検査では3つのテストを行うんですが、

今回は、ひとつひとつ、どんな種類の認知機能をテストするのかを解説したいと思います。

皆さんは大丈夫ですか?!

時間の見当識 (15点満点)

検査時における年月日、曜日及び時間を回答します。

えっ、そんな簡単なことを?

と思われるかもしれませんが、時間の見当識があるかないかで、

例えば、せん妄を含む認知症の有無がわかります。


時間の見当識は、MoCAとMMSEでもテストされる

標準的なテストといっていいと思います。

手がかり再生(32点満点)



全部で4枚の用紙に描かれているイラスト(例:ライオン)を見て覚えてもらいます。

それぞれの用紙にイラストは4つ描かれているので、計16個のイラストを覚えます。

一枚の用紙を見ることができる時間は1分で、合計4分かけて16個のイラストを覚えます。


そして、すぐではなく、

しばらくして覚えているイラストの名前(例:ライオン)を用紙に書きます。

回答の仕方は2種類あって、まずは自由回答、次に手がかり回答になります。


自由回答とは、ヒントなしでの回答、

手がかり回答とは、

ヒント、例えばライオンに対しては「動物」というヒントが書かれています。


この手がかり再生は、警視庁のオリジナルですかね。

MoCAとMMSEでもイラストを見て名前を答えるテストと

試験官が言った言葉を覚えて、後でそれを口頭で答えるテストがありますが

手がかり再生は、これらのテストのハイブリッドのようです。



でも実は、この2つのテストは別々の認知機能をテストしているんですよ。


例えば、MoCAやMMSEでも描かれたイラストの名前を答えるテストがありますが、

イラストを見てすぐに言ってもらいます。


これは形の分析をする機能と付随する意味(名前)を読み出す機能のテストです。

認知症を発症している人は、この機能に障害があります。


MoCAやMMSEのもう一つのテストでは、言葉を覚えてもらい、

後で思い出して言ってもらうというテストがあります。

これは記憶障害を見つけるテストです。


言葉でなく、イラストを覚えるというのは警視庁の手がかり再生のオリジナルです。

運転が聴覚よりも視覚を使うからでしょう。

視覚に関わる認知機能が重要ということですね。


本来は、自由回答からは記憶の呼び出し障害

手がかり回答からは情報の符号化の障害と、別々の障害を見分けることができるはずですが、

警視庁の手がかり再生での採点では、二つの回答からの点数を足してしまうので、

この二つの障害の違いは重視されていません。


余談ですが、アルツハイマー病の人は、手がかり回答での点数が悪いようです。

また、覚えるイラストの数が16個と多いですよね。

このくらいあると、記憶障害のある人とない人を正確に区別することができるのでしょう。

時計描写 (7点満点)

このテストでは、

アナログの時計の文字盤を検査用紙に書いてもらいます。


ちゃんと、1から12までの数字を入れて、指定された時刻になるように針も描きます。


なんでもないようなテストなんですが、結構手こずる人が多いんですよ。

時計描写のテストは、軽度認知症や認知症を見つけるために広く使われています。

数字の配列が均等でないと、空間視覚・計画性の障害とされ、

数字が全部かけていないと、時計の概念の欠如とされます。

点数と解釈

  • 76点以上:記憶力、判断力に心配はありません。2時間の高齢者講習を受けます
  • 49−76点断力が少し低くなっています。3時間の高齢者講習をうけます。
  • 49点未満:記憶力、判断力が低くなっています。
    臨時適性検査(専門医による診断)を受け、又は医師の診断書を提出してもらいます

警視庁の認知機能検査がどの程度、

運転能力との関係の妥当性をテストしたのかは、ちょっとわかりませんが、

類似の認知テストMoCAやMMSEは、その関係が研究で証明されています。

MoCAやMMSEで運転の適性を計るという記事はこちらを!

↓↓↓↓

高齢者の運転は危ない?:MoCAやMMSEで適性は計れるか?




気になった方、時計の絵を描いてみますか?

このようになっていたら要注意ですよ!


出典:Nakashima H, Umegaki H, Makino T, Kato K, Abe S, Suzuki Y, Kuzuya M. Neuroanatomical correlates of error types on the Clock Drawing Test in Alzheimer’s disease patients. Geriatrics & gerontology international. 2015 Aug 1.


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