以前SDMTについて簡単に説明した記事を書きました。

今回は、SDMTの基準値について書いていきたいと思います。

基準値 その1  オーストラリアとアメリカ

Ryan et al. (2020)が、オーストラリアとアメリカでの基準値を報告しています。

  • 研究対象人数:19114人
  • 年齢:65-99才
  • 認知機能:Modified MMSE (ミニメンタルステート検査の拡張版)の点数が
    78点以上であること
  • 目的:年齢、性別、学歴、人種を考慮に入れた、community-dwelling*の
    高齢者のSDMTをまとめること

*community-dwellingとは、病院や施設でケアを受けずに、
ある程度自立して生活していることを意味します

特徴ごとのSDMTの点数の平均値、標準偏差値、範囲 (Ryen et al. (2020) の表2より)

基準値 その1のポイント

  • 点数は、高齢になるほど低い
  • 点数は、学歴が低いほど低い
  • 点数は、人種によって違う
  • 点数は、男性のほうが低い


全体の平均値を見てみましょう。は36.8、標準偏差値は10.2、範囲は1から9です。

平均は、大丈夫ですよね。範囲ですが、一番低い点数の人は1点、

最高得点の人は97点だったということです。

平均値や範囲はわかりやすいと思いますが、標準偏差値(SD)って、なに?

と思われる方も多いのではないでしょうか。

標準偏差値は点数の散らばり具合を表しています。

数値が小さいほど、みんな似たり寄ったりの点数、数値が大きいほど、

点数のばらつきが大きいということです。


今回の場合、36.8±10.2内でなければ、点数が(やや、またはかなり)少ない、

多いと判断することができます。

基準値 その2 オーストラリア

Kiely et al. (2014)、オーストラリアでの基準値を報告しています。

  • 研究対象人数:11456人
  • 年齢: 15-100歳
  • 健康度: テストを受けるのに補助がいらないこと、
    テストの説明が理解できること、テストを受けることに同意すること、
    テストを完了すること
  • 目的:オーストラリアの15歳から100歳までのSDMTの基準値をまとめること
男女別のSDMTの点数の加重平均値、標準偏差値、パーセンタイル
(Kiely et al. (2014) の表5より)

基準値 その2のポイント

  • 点数は、年齢が上がるほど低くなる。高齢になるほどそのパターンがさらにはっきりしてくる
  • 点数は、英語が母国語でない人ほど低い
  • 点数は、男性のほうが低い
  • 点数は、学歴が低いほど低い(30歳以上の人のみ)
  • 点数は、健康状態が悪かったり、機能障害がある人ほど低い

先ほど標準偏差値(SD)については説明しました。

今度は、加重平均ってなに?パーセンタイルって何?ですよね。


最年少の年齢のグループ(15-19歳)を見てみましょう。

このグループの加重平均値は54.09です。

何が普通の「平均値」と違うかというと、この値を計算するにあたって

このグループの数値が実際のオーストラリアの人口の15才から19才の男性という

2つの要素(年齢と性別)を加味していることです。

今回は普通に、「平均値」と考えていいと思います。


パーセンタイルですが、データを小さい順に並べたとき、

初めから数えて全体の何%に位置するかをさします。

例えば、最年少の年齢のグループ(15-19歳)のグループですが、

45点をとると、20パーセンタイルです。これは、80%の人が上にいるということです。


女性の最年少の年齢のグループ(15-19歳)のグループを見てみましょう。

加重平均値が56.91と、男性の同演題のグループより点数が高いですね。

女性の最年少グループでは、49点が20パーセンタイルです。

80%の人が、この上にいるということです。

女性のグループのほうが、レベルが上ということがわかりますね。

比較

Ryan et al. (2020) も Kiely et al. (2014)も、

サンプルサイズ(研究対象にした人の人数)も多く、

基準値をするにあたり、信頼できる値を得ることができるでしょう。

Ryan et al. (2020) ですが、人種ごとに基準値をまとめたことは、注目できますね。

ただ、論文のなかでも触れていますが、アジア系のデータにかけているという短所があります。


Kiely et al. (2014) ですが、個人的には、パーセンタイルで基準値が出ていると、

平均値だけでなく、同年代中での位置がわかっていいですよね。


Ryan et al. (2020)の値を見てもわかりますが、人種によって基準値も変わってきます。

そのため、参考程度にするのはよいかもしれませんが、

これらの数値をそのまま日本人に当てはめることには無理があるでしょう。

日本の研究者の方にも是非、標準値の研究をしていただきたいと思います。お願いします!

参考文献

Kiely, K. M., Butterworth, P., Watson, N., & Wooden, M. (2014). The Symbol Digit Modalities Test: Normative data from a large nationally representative sample of Australians. Archives of Clinical Neuropsychology, 29(8), 767-775.

Ryan, J., Woods, R. L., Britt, C. J., Murray, A. M., Shah, R. C., Reid, C. M., … & Storey, E. (2020). Normative data for the symbol digit modalities test in older white Australians and Americans, African-Americans, and Hispanic/Latinos. Journal of Alzheimer’s disease reports, 4(1), 313-323.


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