こんにちは、ヨーコです。


日本ではあまりおなじみではない高次脳機能障害をテストする神経心理学的検査として

Auditory Consonant Trigram (ACT) Testがあります。


ACT Testは聴覚の作業記憶などの複雑な注意の機能を測定する目的でデザインされていて

私の住んでいるカナダ、そしてアメリカでは注意機能を測定する神経心理学的検査としては

上位40位の中入っています。


Auditory Consonant Trigram (ACT) Test とは

もともとは短い間に起こる記憶の低下、

つまり「直接[即時]記憶」を調べるために開発されたテストです。

被験者は提示されたアルファベットを妨害課題をこなしながら覚えていてもらいます。

つまり、リハーサル(暗唱)なしでどのくらい覚えていられるかを測ります。


他の神経心理学的検査と同様、はっきりと、どの認知機能を測定するかということについては

ビミョーなところです。あくまでも、「はっきりと」がビミョーと言う意味ですが。

ACT Testの精神測定学的特性

健常者をテストした場合、年齢や性別の影響はないように見られます。

再検査信頼性は、高齢者の場合 r=.71と、妥当な結果が出ています。

しかし、妥当性になるとちょっと曖昧です。


学歴の影響については、「アリ」と報告している研究が多いです。


ACT Testは、因子[要因]分析において、基本的な分割的注意短期記憶
聴覚・視覚の作業記憶と、複雑な注意の機能にに関わっているという研究結果があります。


また、注意のネットワークの中の

刺激に備えて準備する、またはそれを維持する(alerting)

特定の情報を選択する(orienting)機能と関係しているという結果も出ています。


注意のネットワークに関する詳しい記事はこちらを!

↓↓↓↓

認知機能、注意のネットワーク(ANT)と関係する脳のネットワーク



また、注意欠陥過活動性[多動性]障害(ADHD)(健常者vs患者)、

多発性硬化症(MS) (再発寛解型MS vs 二次進行型MS)、

外傷性脳損傷(TBI)(軽度外傷性脳損傷 vs 重度外傷性脳損傷)

抑鬱障害に関しても

特定のグループの間に(カッコ内)テストスコアの違いが出たとうい報告があります。

テストの仕方




被験者は試験者が提示する、3つの子音(例:QLX)を覚えます。

覚えている時間はその都度異なります(例:0、9、18、36秒)。

このインターバルの間、被験者は妨害課題をします。

妨害課題は、与えられ数字から声を出して、

試験者から合図があるまで「3」を引き続けます(例:100、97、94、91…)。

妨害課題は、3つの子音が提示されてすぐに初めてもらいます。

決められたインターバルが経過すると、試験者は被験者に合図をし、

被験者は、覚えていた子音を答え、試験者はその回答を記録します。

採点

3つの子音のうち、正しく覚えていた子音の数を数えます。

順番は関係ありません(QLXが提示されていても、

XLQ答えたら正解の数は「3」ですね。)

そして、インターバルごとの合計点を出します。

つまり、インターバルが9秒の時の合計点、18秒の時の合計点、といった具合です。


あいにく標準値が出版されてないように見受けられますが、

健康な高齢者(55−80歳)、173人を、

0、3、9、18秒のインターバルでテストした結果、

合計点の平均は、47.7(60点中)という報告があります(Ishigami et al. 2016)。


またインターバルが長いほど難しいわけですが、

健康な高齢者(50歳ー69歳)30人の9、18、36秒のスコアですが、

9秒が11.5点、18秒が10.2点、36秒が8.7点という報告があります。

(それぞれのインターバルの合計点は15点です)(Stuss et al., 1988)

参考文献:
Ishigami Y, Eskes GA, Tyndall AV, Longman RS, Drogos LL, Poulin MJ. The Attention Network Test-Interaction (ANT-I): reliability and validity in healthy older adults. Experimental brain research. 2016 Mar 1;234(3):815-27.

Shura RD, Rowland JA, Miskey HM. Auditory Consonant Trigrams: A Psychometric Update. Archives of Clinical Neuropsychology. 2015 Dec 7;31(1):47-57.

Spreen O, Strauss E. A compendium of neuropsychological tests. 1998. NY: Oxford University Press Google Scholar.

Stuss DT, Stethem LL, Pelchat G. Three tests of attention and rapid information processing: an extension. The Clinical Neuropsychologist. 1988 Jul 1;2(3):246-50.