こんにちは、ヨーコです。
最近、軽度認知症(MCI)のスクリーニングに注目が集まっています。
軽度認知症とは、健常者と認知症の中間にあたる段階で、
認知機能(記憶、決定、理由づけ、実行など)に問題が生じてはいますが、
日常生活には支障がない状態のことです。
軽度認知症(MCI)定義
軽度認知症の定義をリストアップしてみました。
- 記憶障害の訴えが本人または家族から認められている
- 日常生活動作は正常
- 全般的な認知機能は正常
- 年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する
- 認知症ではない
参考文献:
Petersen RC, Smith GE, Waring SC, Ivnik RJ, Tangalos EG, Kokmen E. Mild cognitive impairment: clinical characterization and outcome. Archives of neurology. 1999 Mar 1;56(3):303-8.
なぜ軽度認知症のチェックが大切なのか?
さて、なぜ軽度認知症のスクリーニングに注目が集まっているかと言いますと、
初期の段階でスクリーニングができると:
- 本人や家族に重要な情報やサポートを提供できる
このことによって、本人や家族が将来設計を積極的にし、
施設への入所に伴う金銭的な負担を減らすこともできる - 実際に診断されないと症状を改善する薬やセラピーなど受けることができない
- 早い段階でのセラピーは、認知機能だけでなく鬱などの気分障害を改善に対しても効果的で
介護者の精神状態も向上し、さらには施設への収容を遅らせることができる - 診断されないままでいるとせん妄や自動車事故、投薬ミス、経済的な不自由などのリスクが増える
しかし、実際のところ、一般的なMMSEなどでは軽度認知症のスクリーニングは難しく、
後になって、アルツハイマー病などの認知症を診断された時、
「そういえば、何年も前からその兆候があった!」と家族は思うわけです。
AD8の概要
さて、AD8ですが、本人ではなく(場合によっては本人でも良い)
介護者(配偶者、成人の子供、家族以外の介護者)がインタービュー形式で
ここ数年の本人(対象者)の認知機能に変化があったかを答えます。
また、他のテスト(例:MMSE MoCA)と違い、基準となるのが
一般の基準値ではなく本人の基準値(本人の以前の能力)になります。
このタイプのテストですと、本人が基準なので学歴や性別等を気にする必要がないですね。
AD8の8つの質問
AD8は、8つの質問からなっています。
AD8日本語版(AD8-J)は東北大学の目黒教授らのチームによって作成されました。
参考文献:
目黒謙一, 葛西真理, 中村馨. 簡易観察尺度 AD8 日本語版 (AD8-J) の信頼性と妥当性の検討. 日本老年医学会雑誌. 2015 Jan 25;52(1):61-70.
「対象者の物忘れ等について伺います。
数年前と比べて、対象者は、理解力の低下や物忘れのために、
次のことが低下したと思いますか。
はい、いいえ、わからないから一つ選び◯をつけてください。」
- 判断力に問題がありますか(例:詐欺にかかった、買い物の判断ミスがあった、相手にとって適切でない贈答品の購入をした、など)
- 趣味や活動への興味が少なくなりました。
- 同じ質問、話、説明を繰り返すことがありますか
- 道具や家電製品・機器の使い方を学ぶのが難しいことがありますか(例:ビデオデッキ、コンピューター、電子レンジ、リモコンの使用など)
- 現在の正しい年・月を忘れることがありますか
- 複雑な財産の取り扱いが難しいことがありますか(例:家計簿をつけること、税金を納めること、支払いをすることなど)
- 予約や約束(例:病院受診の予約など)を覚えておくのが難しいことがありますか
- 理解力の低下や物忘れがいつもありますか(たまにあるド忘れではなく、いつも見られますか)
AD8の採点
上記の質問に対し、
はい(低下した):1点
いいえ(低下しない):0点
わからない:0点
とし、合計点を出します。
得点が高いほど悪いということになりますね。カットオフですが、
合計点が1点以下は、検査陰性、
合計点が2点以上は検査陽性です。
日本語版では、健常者の平均が0.8点、
軽度認証の人の平均点が1.7点、認知症の人の平均点が5.7点という報告です。
合計点が、2点以上だった場合、ちょっと危ないということで、さらなる検査で
しっかりと診断してもらいましょう!