こんにちは、ヨーコです。
先日CLSA (Canadian Longitudinal Study on Aging) という長期で
高齢者を調査している研究者が主催するオンラインセミナーを見てみました。
ウェビナー(webinar)とも言うんですが、インターネットへのアクセスがあれば
全国各地から参加できるという便利なものです。
今回は、Hepple教授のセミナーで、筋肉と脳の関係をお話ししてくれました。
筋肉の「老化」は運動してもやってくる
運動することは大切ですが、「老化」は運動していてもやってきます、
という厳しい事実をHepple教授はまず話してくれました。
From Hepple,R.T. CLSA Webinar Series: Mechanisms linking healthy brain & muscle aging in elite octogenarian athletes.
まず左の写真をみてください。これは67歳の男性です。
顔が写っていなければ、若い人と今違うくらい筋肉が鍛えられていますね。
運動していると67歳でもここまで出来る、という例です。
右の写真ですが、同じ人の12年後、つまり79歳になった時の写真です。
79歳にしては立派なものですが、
ポイントとしては、同じように運動していても、どうしても筋肉の張りに衰えが見えてきます。
つまり、80歳くらいになると筋肉の作りに急激な衰えが見えてくる、ということです。
高齢のアスリート、何が違う?
ただ、老化に個人差があるように、筋肉の衰えにも個人差があります。
つまり、筋肉の老化があまり現れない人たちもいるんですね。
スーパー・シニアとでもいいましょうか。
ここでは、75歳以上のアスリートに注目しています。
From Hepple,R.T. CLSA Webinar Series: Mechanisms linking healthy brain & muscle aging in elite octogenarian athletes.
75歳以上のアスリート達は普通の高齢者と何が違うのか、Hepple教授たちが
比較してみたので、ちょっと見てみましょう。
まず、高齢者を平均年齢80歳以上の2つのグループに分けました。
- トップクラスのアスリート高齢者(大会で1位、2位になる人たち)
- 普通の高齢者
まず、最大酸素摂取量(VO2 max)の違いを見てみましょう。
最大酸素摂取量は有酸素運動能力を反映して、
長時間の最大限下の運動持久力を決める重要な要素です。
10歳、歳をとるごとに5〜10%減少すると言われます。
トップクラスのアスリートのグループですが
なんと普通の高齢者グループより約2倍以上の最大酸素摂取量がありました。
グラフから見ると、35くらいありましたね。
この数値は大学生のくらいの数値だそうです。
実際、15がこの年齢の人たちの平均値というので、たいしたもんです。
他にもテストをして2つのグループを比べたんですが、
やはり違いが出るんですね。アスリートの高齢者は普通の高齢者に比べると:
- 歩く速度が速い
- 椅子に座っている状態から立ち上がり歩く動作が速い
- 椅子から立ち上がる、椅子に座る動作を何回も素早くこなせる
- 片方の足で立ち長くバランスを保つことができる
一番違いが出ていたのが、最後の、バランスをとるという動作です。
1分間以上片足でバランスを取れる人がアスリートの高齢者には多かったそうです。
なんだか気になりますね。私も誰もいないオフィスでちょっと試してみました。
いや、なかなか大変です。一応グラグラしながら1分はできましたが。
ここで余談ですが、どんな人がエリートアスリートかという、具体例を紹介したいと思います。
4月にアメリカれ行われたボストンマラソンで、
下條道晴さん(81)が80歳以上クラスで3位という、
素晴らしい結果を出しました。
タイムは、4時間38分11秒。
本当にすごいですね。おめでとうございます、下條さん!
下條さんのような人を、エリートアスリートと言います。
筋肉の老化と脳の老化は関係しているのか?
新しい分野なので、まだまだわかっていることは少ないのですが、
注目したいのは、80歳ころになると、筋肉と脳の劣化が急速に始まるというところです。
同じころに、というところが重要です。
先ほどの男性の写真でも見ましたが、80歳を迎えるころ、筋肉の変化は急激に起こります。
大脳皮質も、80歳を超えるとガクンと薄くなっていきます(van Velsen et al., 2013)。
また、フレイルな人(高齢者の筋力や活動が低下している状態)は、
軽度認知症のリスクが高いという研究報告もあります(Boyle et al., 2010)。
逆に、アスリートの高齢者は、
- 言葉や学習の記憶が優れている
- 認知機能の処理速度が速い
- 認知能力全般に優れている
と、Hepple教授のチームの研究の結果が出ています。
側頭葉や前頭葉が良い状態だとHepple教授たちは考えています。
まとめ
すべての人がアスリートの高齢者になることはできません。
運動をするという環境の条件の他に、遺伝等も関係していることでしょう。
ただ、運動していて損はないかな、と。
私の感想でした。
実際、運動が脳力を上げるという記事はこちらをどうぞ!
↓↓↓↓
ウェビナーの動画です(30分くらい)。英語ですが、チャレンジしたい人はどうぞ!
↓↓↓↓
高齢者の脳トレに関するまとめ記事
はじめまして。娘が先日偶然ヨーコさんの本記事に接したとメールくれました。
素晴らしい研究されておられ、敬服いたします。
それにしても、私を名指しでほめていただき恐縮です。
おかげさまで来年のボストンマラソンも、参加料フリーで参加のお誘いいただいています。おだてに乗って頑張ります。
元気なおかげで、今なお老人ホームで宿直の仕事を頂きながら、
ダンス・囲碁・麻雀の相手などのボランティアも楽しくやっています。
有難うございました。ご活躍ください。
下條さん、
コメントをありがとうございます。エリートアスリートご本人からのコメント、こちらこそ恐縮してしまいます。
来年もボストンマラソンに参加されるんですね。
お仕事をされている場所まで、走っていかれると何かで読みました。やはり日々のトレーニングは大切なんですね。
私お一度だけ地元のフルマラソンに参加したことがありますが、トレーニングが大変だったことを覚えています。
お仕事をされる傍ら、ボランティア活動をされているとのこと。頭がさがる思いです。
これからもお体を大切にして、マラソンやお仕事を頑張ってくださいね。応援しています。