こんにちは、ヨーコです。

分割的中作業としての運転中の携帯の使用

運転中に携帯電話を使用は、認知心理学でいう「分割的注意」作業に当てはまります。

最近では、マルチタスク(multitasking)または平行作業とも言いますね。


分割的注意では、その名が示すように、注意が複数の作業に割り当てられます。

日々の生活の中で、私たちが常に行っていることなんですけどね。


たとえば、料理をしながらテレビのニュースを見る。(私の母がよくしています。)

先生の講義を聴きながら、ノートをとる。

そして、運転中に携帯で話す



注意って、人によって容量が違うのですが、限りがあるのは誰にでも当てはまることです。

そして、分割された注意で行われた作業は、普通そのパフォーマンスの質が落ちます。


パフォーマンスの質が落ちるとさらっと書いてしまいましたが

質が落ちるどころか致命的にもなり得るんですよ、運転中に携帯を使用していると。


運転中に携帯電話を使用していると:

  • 一時停止の表示、信号、前方を走る車のブレーキライトなどを見過ごしやすい
  • 見過ごさない場合でも、これらに対する反応時間が遅くなる
  • 追突事故になりやすい、などなど

なので、運転中の携帯の使用時に、

ハンズフリーであるか、手で持っているかはあまり関係なことは容易に想像できます。

実際にそうであるという記事はこちらをどうぞ!

↓↓↓↓

運転中の携帯電話使用が危ない本当の理由:ハンズフリーもダメ!



高齢者 vs. 若者



最近高齢者の運転事故が増えています。

ここで気になるのが、高齢者が運転中に携帯電話を使用すると更に危険なのか?

ということです。


で、実際にアメリカはユタ大学のStrayer博士が実験をしています。

(この人は、携帯電話の使用と運転に関する研究の権威者です)


参考文献:
Strayer DL, Drew FA. Profiles in driver distraction: Effects of cell phone conversations on younger and older drivers. Human factors. 2004 Dec;46(4):640-9.


Strayer博士の実験

Strayer博士の実験では、2つのグループを比べています。

  • 若者(20人):平均年齢20歳の18歳から25歳までの人。
  • 高齢者(20人);兵員年齢70歳の65歳から74歳までの人。

この実験に参加したのはみんな健康な人たちです。


で、参加者は運転シュミレーターの高速道路の設定で、約16キロの区間を4回運転します。

そのうち2回は、運転だけ。あとの2回はハンズフリーで会話をしながら運転します。

前を走る車についていく、が課題です。



出典:Strayer & Drew (2004)

ここで注目したいのは、

前を走る車のブレーキランプを見てブレーキを踏むまでの時間の結果です。


若者の平均反応時間は、運転のみの課題で780秒、会話と運転の課題で912秒。

高齢者の平均反応時間は、運転のみの課題で912秒、会話と運転の課題で1086秒。


ここで言えるのは:

  • 携帯で会話と運転をしていると年齢にかかわらず反応時間が遅くなる。
  • 高齢者はやや反応時間が遅いが、統計的に有意となるかはちょっときわどいところ。

ではここで、この結果を一般道を60キロ走っていたとして、

ブレーキに足がかかるまでの車が走る距離を換算してみました。

  • 若者の距離は、運転のみの課題で約13メートル、

    会話と運転の課題で約15メートル。

  • 高齢者の距離は、運転のみの課題で約15メートル、

    会話と運転の課題で約18メートル。

注:ブレーキを踏んでから完全停止まで、更に車は動くことをお忘れなく!


両方のグループとも60キロで走っていた場合、携帯(ハンズフリー)で会話をしていると

ブレーキに足がかかるまで、3メートル余分に走ってしまうということですね。


つまり、両グループとも、携帯での会話の運転への影響は同じ、ということです。


ですが、もともと高齢者グループの反応時間は遅いので

高齢者が携帯を使うと更に危ない、と言ってもいいのかもしれません。


あ、あと注目してもらいたい結果は、


若者が携帯で電話しながら運転していると、

高齢者が普通に運転しているレベルと同じになってしまうということです。


いやー、怖いですね。


ということで、

老いも若きも、
運転する時は携帯電話は使用しないでくださいね!


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