こんにちは、ヨーコです。


前回、脳卒中の障害のひとつ、高次脳機能障害、

その中でも特に、半側空間無視について書きました。

↓↓↓↓

脳卒中の後遺症:半側空間無視などの高次脳機能障害




厚生労働省も高次脳機能障害は

「一見してその症状を認識することが困難であることなどから、

国民や関係者の間に十分な理解が得られている状況にはない」
としています。


半側空間無視って何?

半側空間無視は、脳卒中後や怪我の後の臨床症状のことで、

多くが右脳の損傷の後に起こり、

左側にあるものに注意を払うことが難しくなります。


ここでいう「注意」とは認知機能に関わる注意のネットワークのひとつ、

空間の特定の情報を選択する(orienting)機能ですね。


注意のネットワークに関する詳しい記事はこちらを!

↓↓↓↓

高齢者の脳トレ:認知機能(注意のネットワーク)を鍛えよう!




障害は多くは、障害の名前が示すように「空間的」なものですが、

実際は、これも注意のネットワークのひとつである、

刺激に備えて準備する(alerting)機能にも影響が見られるのも普通です。

半側空間無視ってどのように検査するの?:BIT行動性無視検査

半側空間無視は、BIT(Behavioral Inattention Test)行動性無視検査を使って

検査することができます。


この検査は紙と鉛筆を使ったとても簡単なものです。

全部で6種類の検査があります。

被験者になった場合、何をするのかをここで説明します。

線分抹消試験

目の前に置かれた検査用紙に短い線が約40本散らばっています。

その線のひとつひとつに印をつけていきます。


出展:半側空間無視 – 脳科学辞典


この例では、左側の線がほとんど印をされてませんね。

左側を認識できないという半側空間無視の一例です。


本来は1本でもミスっていると危ないんですが、

36本中、印がついている線が34本以下だと、半側空間無視の可能性アリです。

文字抹消試験

(日本語のサンプルが見つからなかったので、英語版で説明します。)

目の前に置かれた検査用紙に文字が書かれています。

「E」と「R」に印をつけていきます。



(出展:Hemianopsia.net)


この例では、左側の「E」と「R」がほとんど印をされてませんね。

左側を認識できないという半側空間無視の一例です。


本来は1文字でもミスっていると危ないんですが、

40文字中(日本語版)印がついている線が34字以下だと、

半側空間無視の可能性アリです。


星印抹消試験

(日本語のサンプルが見つからなかったので、英語版で説明します。)

目の前に置かれた検査用紙に、大小の星と文字が印刷されています。

小さな星に印をつけていきます。



出展:Gallagher M, Wilkinson D, Sakel M.
Hemispatial neglect: clinical features, assessment and treatment.
British Journal of Neuroscience Nursing. 2013 Dec 1;9(6):273-7.


この例では、左側の小さな星がほとんど印をされてませんね。

左側を認識できないという半側空間無視の一例です。


全部で小さな星は54個あります。

本来は1個でもミスっていると危ないんですが、

印をつけた小さい星が51個以下だと半側空間無視の可能性アリです。

模写試験

目の前に置かれた検査用紙に花の絵が書かれています。

この花の絵を模写します。



出展:半側空間無視 – 脳科学辞典


この例では花の左側が模写されてませんね。

左側を認識できないという半側空間無視の一例です。


採点は、採点者の主観的要素が含まれますが、

4点中、3点未満だと半側空間無視の可能性アリです。

線分二等分試験

目の前に置かれた検査用紙に一本の線が書かれています。

この線の中心と思われるところに印をつけます。



出展:半側空間無視 – 脳科学辞典


この例では、かなり右寄りに印が付けられています。

左側が認識できていないので、中心も右側にずれくるんですね。


印がどのくらい中心からずれているかによって採点され、

9点中、7点未満だと半側空間無視の可能性アリとされます。

描画試験

目の前に白紙の検査用紙が置かれています。

この検査用紙に(お手本なしに)時計を書きます。



出展:Chen P, Goedert KM. Clock drawing in spatial neglect: A comprehensive analysis of clock perimeter, placement, and accuracy. Journal of neuropsychology. 2012 Sep 1;6(2):270-89.


4つ例をあげてみましたが、すべての例に置いて、左側の空白が目立ちます。

左側を認識できないという半側空間無視の一例です。


採点は、採点者の主観的要素が含まれますが、

3点中、2点未満だと半側空間無視の可能性アリです。




最高点は146点、131点以下だと半側空間無視の可能性を疑うことになります。

ただし、合計点が131点よりも高くても、

個々の検査で「半側空間無視の可能性アリ」の点数がでたら

やはり、半側空間無視の可能性を疑うことになります。


認知機能テスト・スクリーニングのまとめ記事